【お辰巳】

昔、戦国時代には広島は毛利家、伊予は河野家がそれぞれ割拠しておりました。河野家の殿様が亡くなり毛利家がこの時とばかりに船団を連ねて攻めてまいりました。河野家の若殿は合戦の経験も浅く勝ち目はないと思い一族家来郎党をひきいて辰の日の夜中、亡き殿様の墓前にお参りをし『これから毛利家との合戦にまいります。どうかお見守りください。』とお祈りし供えた餅を刀で切って墓に背を向けないように肩越しに分け与えました。『この餅を亡き殿の血肉と思って食べよ。』と言い一族郎党も涙しながら餅を食べ団結をお誓いいたしました。
毛利家は攻めてくる途中しけにあい船団もバラバラになって一艘つくとそれを攻撃し、また一艘つくと攻撃するといった具合でとうとう毛利勢を打ち負かすことができました。
親族が亡くなり、皆が悲しんでいる上にさらに敵が攻めてくるといった苦難がふりかかっても、一族が心を合わせ結束を誓うなら困難も乗り越えられるということから辰巳の行事が始まったといわれております。

【お辰巳の準備】

お辰巳は12月最初の辰の日に行います。
以前は辰巳の間をかけて夜中にお参りをしておりましたが、最近では辰の日の夕方されているようです。
【仏壇・祭壇】
●家では祭壇または仏壇にお位牌・お霊供膳・お菓子・果物・一丁豆腐に箸を立てたもの・餅(お墓に持っていく用)をお供えいたします。

【墓地】
●墓地はお花やはなしばと共に松を供えます。
●墓前または祭壇にしめ縄(左内にする)を供えます。

【行事】
●仏壇・祭壇にお供えしていましたお餅を墓地へ持って行き、お墓でお参りをします。その後ワラを燃やしてお餅をあぶり、家長が包丁で切り分け、包丁に刺したまま肩越しに親族に分け与えその場で食べます。

お餅をあぶる

肩越しに分ける